雨のち晴れ
「とても強い瞳で、でも悲しそうな瞳だった。大人なんて信じていないような、そんな瞳。事実そういう過去のある子だったよ。
ありがたいことに、紗子はこのお店のことを気に入ってくれて通ってくれた。だから、高校進学と同時にバイトで採って、少しの範囲だけど、見守ってる。」
「そうなんですか。」
俺がお店を辞めたのが、4年の初夏。そこからいろいろバタバタしていた中、そんなことがあったんだ。
伯父さんは何でもお見通しなんだな。
その女の子も、きっとお店だけじゃない。俺と同時に、伯父さんのことが気に入ったんだろうな、と思う。
伯父さんはそういう人。
惹かれる人は惹かれる人。
「周りの人たちに反発して生きているよ。誰も信じないって。強くて、たくましい。
でも本当はとても弱い。それを隠して強くなっているだけ。とても純粋で、素直で、いい子なんだ。」
「へぇ…」
ところで、伯父さんはどうしてその子の話ばかりするのだろう?
大事な話って言っていなかったっけ?
「せめて、大学を卒業するまでは、紗子のことを見守りたいと思っている。」
「え?」
「まだ彼女を1人にするのは不安なんだ。」
「伯父さん…?」
胸がざわついた。
見守ればいいよ、伯父さんが。その子が卒業するまで見守ればいい、そう思うのに何も言えなかった。
「正樹にお願いしたいんだ。」
「え?」
「遠くからでいい。時々でいい。紗子のこと少し見てくれないか?」
「えっ、伯父さん…?何言ってんの?」
伯父さんは初めて視線を逸らした。俯いて呟く。
「もう、僕には紗子のことを見守ってやれないんだ…」