雨のち晴れ
毛布からは正樹の匂いがした。
まるで、正樹に包まれているような…そんな温かさ。
そう言えば、私泣きながらずっと正樹に抱き締められていたっけ?
今 冷静になって考えてみると、大胆というかなんというか…もちろん、お互い変な気持ちは無いんだけど。
私…正樹のこと好きなのかな?
正樹が言ってくれる私に対する〝好き〟と同じなのかな?
よく分からないけれど、多分今の私にとって、正樹は無くてはならない人。
マスター以外に頼ったことが無かった私にとって、正樹は色んな意味で初めての人。
かけがえのない、大切な人。
そんなことを、うつらうつらとする頭の中で考えながら、私は眠りの世界へと足を運んで行った。
そして、目が覚めた時はうっすらリビングの電気は消されていて、キッチンから光が漏れていた。
やば、寝過ぎた?今何時?
ゆっくりと起き上がる。
なんだかよく寝た気分、心地よい目覚めだった。
私はリビングの電気のスイッチを入れた。
「あ、紗子。おはよう?」
「ごめん…寝過ぎちゃった。」
「ん?そんなことないよ。お腹空いてるだろ?もう少し待っててな。」
部屋にはいい香りが広がっていた。
確かにお腹はぺこぺこ。
お昼ごはん、そう言えば食べていなかったなぁ。
キッチンに立つ正樹、何でも出来ちゃうんだなぁ、と思わず感心する。