雨のち晴れ


「よし、完成。」

少しして、正樹の声とともにテーブルを見る。
私は並んでいたメニューに言葉を詰まらせた。

「正樹…これ…」

「そう、伯父さんのオリジナルレシピ。味は…分からないけどな。」

テーブルの上には、生ハムサラダとブルスケッタ。そして…カルボナーラ。

言うまでもなく私にとって、マスターと大切な思い出のうちのひとつだった。

「さ、食おう。」

「うん。」

正樹と向かい合って座る。

「いただきます。」

カルボナーラは…懐かしくて懐かしくて。
見た目も香りも味もマスターが作るそのものだった。

「美味しい…」

私は感動を通り越して、とても嬉しくなった。

「正樹、すごい。美味しい。」

「ふふっそうか、良かった。ずっと紗子に食べさせてやりたかった。
初めて飯行ったとき、カルボナーラ頼んでるの見て、いつか食べさせようって決めてたんだ。」

正樹は優しくそう言った。


「私、もうこのカルボナーラ食べれないと思っていたから…ありがとう、すごく嬉しい。」

柄にもなく、少しばかり興奮気味に話す私。
だってね、それくらい再現されている。マスターが作るカルボナーラだもん。

「なかなか最初の頃は、この味が作れなくてさ。タイミングとか火加減とか…材料同じでもこんだけ違うんだぁって。
料理は奥深いよ、本当に。」


正樹と食べるご飯。

まだ数回なのに、その時はなんだかずっと昔からこうして毎日一緒に食べているような気がした。


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