仲良し8人組
勝也の記憶が消えてしまっていても、亮介がこの家に来ていた記憶は残っているのだろう。
だから、勝也の母親もまるで自分の息子が帰って来たのを喜ぶ様な表情をしたのだ。
「あっ、貴文君?」
彼女がニヤッと笑う。
亮介の考えなどお見通しだというその顔。
それに亮介が苦笑しながら口を開いた。
「はい。居ますか?」
「居るわよ。どうぞ」
家の中へと入るように手招きしてくれるが、今はゆっくりと話をする時間は無い。
「いや、ちょっと顔が見たかっただけですから」
遠慮がちにそう答える亮介を見て彼女がパチンッと手を打った。
「じゃあ、貴文君呼んでくるわ!」
そのまま階段へと駆けていく彼女の背中に、
「ありがとうございます」
と亮介が頭を下げた。
タンタンタンという階段を上る音の後に聞こえてきたのは、彼女と貴文の会話。
「貴文君。亮介君が来たよ」
「亮介かぁ。久しぶりだな」
貴文の声音は低いのによく響く音程だ。
その声を懐かしそうに微笑んで聞いている亮介とは対照的にひなはビクッと肩を揺らして身を縮こませた。
一度も会った事の無い人に初めて会うという緊張からなのだが、背中をツーっと伝う汗が余計にひなの緊張を煽る。
トンッ
トンッ
トンッ
1段ずつ階段を下りてくる足音と共に、ひな自身の心臓の音が頭に響く。
あまりもの緊張を少しでも誤魔化す為に亮介に話しかけようとしたその瞬間、
ストンッ
その音と共に貴文が顔を見せた。