仲良し8人組



時が止まった。


息が出来ない。


身体の震えが止まらない。



「貴文君!」


「よっ、亮介!」



楽しそうに笑っている亮介の横で、真っ青な顔をして小刻みに身体を震わせているひな。



この人の。


この人の顔、……見たことがある。



初めて会った筈なのに、ひなは貴文の顔に見覚えがある。


がっしりとしたがたいに黒の短髪の頭。スポーツマンの様な爽やかな雰囲気を漂わせる貴文。


貴文の顔を見た瞬間にひなの頭に過ったのは、この世界に来る前に見ていた臨時ニュースの内容だ。



「な、……何で。……何でこんな所に」



そう漏らした声は酷く小さくて亮介には届いていない。


勝也の親戚だという貴文。


彼の顔はそのニュースで流れていた犯人の顔にそっくりなのだ。


瀬野貴文という名の犯人に。


他人の空似という言葉や、世の中には自分にそっくりな人が3人はいるというよく言うが、そうなのかもしれない。


何故なら彼は3年前に殺人犯で捕まった筈だ。


確か3人もの人を殺してだ。


瀬野貴文なわけが無い!そう思おうとしても、ひなの身体の震えは治まらない。



この場から逃げたい。



ただただそんな思いが溢れてくる。



「亮介、……もう帰ろ…」



ひなが震える手で亮介の上着の裾を少し掴むと、ツンツンと引っ張った。


それに気付いた亮介が一瞬だけ不思議そうな顔をしたが、直ぐに


「貴文君、じゃあまた」


と話を締め括る。


切羽詰まったひなの表情に、何かあったのだと確信したのだ。


< 156 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop