仲良し8人組






「まあまあ、そんなカリカリすんなよ。そんな気がしただけさ」


「気?」


「ああ。何となくってやつさ」



卓はひなが見えていないし、ひなの声も聞こえていない。


それは亮介と話す姿を見ただけでも分かる。


それに仲良し5人組と言った時点でひなに関する記憶も無い。


だが、馬鹿な女。そんな気がした。と言う卓は少なからずひなの記憶が残っている様にも思える。


つまり、ひなに関しての記憶は消えている筈なのに、僅かに残っていた記憶の欠片がそう卓に思わせた。


そう考えるのが一番しっくりとくる。



完全に記憶を消す事は出来ていないんだ。



卓がパタンと手に持っていた本を閉じると、それを机の上に置く。


そして亮介にへらっとした笑みを向けた。



「まあ、飲み物でも持ってくるからちょっと待っててよ」


「…………」



苛立っている亮介にひらっと手を軽く振ると、部屋から出て行く卓。


カチャッと部屋のドアが閉まった瞬間、亮介がチッ…と舌打ちをした。



「卓のやつ……」



腕を組んで眉間に皺を寄せている亮介は、怒りが治まらないらしい。


そんな亮介の隣でひなは、じっと卓が置いていった本を見つめている。



あの本には何が書いてあったんだろう?


卓は何も無かったと言ったけど、それは……本当?



卓が言った事を信じ切る事が出来ないひなは、置かれている本の中が気になってしょうがない。


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