仲良し8人組



亮介の前に屈み再び声を掛けようとした瞬間、ひなの目に亮介の後ろの廊下が映った。



「あっ……、居る……」



ゆっくりとこっちに向かって歩いて来ている。


黒い髪を靡かせながら。


彼女の目は確実にひなを捉えていて、ひなと目が合うとニイッと口角を上げる。



「いいから先行けっ!」



ひなの様子に気付いた亮介が、ひなの身体をトンッと押す。



「でも……」


「行けっ!」



低い声音と共に真剣な目をしてひなを見つめて叫ぶ亮介の言葉にひなはもう、でも…とは言えない。


亮介も分かっているのだ。


だからこそ先に進めと言うのだ。


ひなはまだこの校舎から出る事が出来ないから。


ひなはまだ記憶を全て思い出していない。今、この校舎から出てしまったらきっともう思い出せないだろう。


記憶を思い出さなければ消える。


ひなが消えるのを防ぐ為に、先に行けと亮介は言うのだ。



「う、うん」



震える声でそう返事をすると、直ぐ様立ち上がって行くべき場所へと駆け出す。


明が死んでいるのを見た家庭科室へと。


さっきまであった手の温もりはもうない。



「はぁ…、はぁ……」



ひなの荒い息使いが廊下に響く。


それでも走り続ける事しか出来ない。


3階にある家庭科室へと向かう為に、ダンッと大きな音をたてながら階段を上っていく。



亮介は大丈夫だろうか?



そう思うのに後ろを振り返る暇すらない。


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