絶対王子は、ご機嫌ななめ

「政宗さん。そういうことは、私じゃなくて円歌ちゃんに言って下さい」

「はぁ? なんで円歌に、そんなこと言わないといけないんだ?」

政宗さんは、とぼけた顔してそう言うけれど。

ホンキでそう思ってるの?

あ、でもそうか。恋人同士なら一緒に入るのは当たり前のことだから、いちいち口に出さなくてもいいってわけだ。恋愛経験のない私にとっては、考えられないことだけど。

「そうでした、すいません。じゃあ私は、ひとり寂しく入ってきます」

とぼとぼと歩き出し政宗さんの脇を通り過ぎようとすると、トンと肩に軽い重みを感じた。

振り向くと、私のことを見つめる切れ長な眼とぶつかる。その瞬間トクンと心臓が跳ね、それを悟られないように視線をそらした。

「柚子」

突然名前を呼ばれてゆっくり視線を戻すと、政宗さんはふっと甘い笑みを漏らす。

「キズ、まだ痛むんだろ? 気をつけて風呂入れよ」

「あ、あぁ、はい。ありがとうございます」

な、なんだ、キズの心配か……って、何ガッカリしてるのよ私! もしかして、『やっぱり一緒に入るか?』とでも言って欲しかった、とか思ってたんじゃないでしょうね?

そう自分に問いかけて、答えに詰まる。



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