絶対王子は、ご機嫌ななめ

  相変わらず、ご機嫌ななめ?


グリーンに目線を動かせば、表彰式の準備が始まっていて。政宗さんはテントの中でスコアの最終チェック中。

四年ものブランクがあって復帰第一戦目で優勝するとは、誰もが思っていなかっただろう。

開催者やスポンサー、そしてギャラリーも、未だ興奮冷めやらずと言った感じで。表彰式を待つ会場は、あちらこちらでざわざわしている。

そして、私はというと……。

さっき政宗さんがいきなり抱きしめたりするもんだから、針のむしろ状態。

政宗さんのファンだろう。さっきから二人の女性が私を見ては、コソコソと何かを話している。

こんなとき、好きになった人が有名人だったことを痛感させられる。

どうせ『政宗さんには似合わない』とでも言ってるんだろう。

ふん! いいですよ、いいですよ。そんなこと、自分が一番良く分かってますから!

負け惜しみよろしくとばかりに鼻息を荒くしていると、隣に座っている円歌ちゃんに笑われた。

「柚子、落ち着いて。さっきのハグは目立ってたからね、しょうがないよ。政宗さんもいい大人なんだから、時と場所を考えろって言うのよ」

さすがは円歌ちゃん。私の心の中なんて、すぐにお見通しって言うわけね。

でも円歌ちゃんのお陰で気持ちが落ち着くと、まわりからの視線も気にならなくなってきた。



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