絶対王子は、ご機嫌ななめ

「政宗さん、ああ見えて結構子供っぽいんですよ。俺様なのに」

「はいはい。おノロケ、ごちそうさまでした。あ~あ、私も早く彼に会いたくなってきちゃった。表彰式が終わったら、ダッシュで帰らなくっちゃ」

「え? そうなの?」

「どうせ柚子は、政宗さんと一緒に帰るんでしょ?」

円歌ちゃんのその言葉で頭の中に、『今夜は帰さない』と言った政宗さんの低い声を思い出す。

あれって、やっぱりそういうこと?

恋愛小説やドラマの中で『今夜は帰さない』ってセリフが出てくると、その後決まって甘いシーンが登場する。そのシーンに、政宗さんと自分を埋め込んでみると……一瞬で顔がゆでダコ状態になってしまった。

「円歌ちゃん、私どうしよぉ~」

「あんた、何真っ赤な顔してんのよ?」

「だって政宗さん、今夜は帰さないなんて言うんだもん。それって、やっぱり……」

こういうことは、経験者に聞くに限る。

藁をもつかむ思いで円歌ちゃんにしがみつくと、円歌ちゃんをじっと見つめた。

「そういうことか。柚子ももう二十二歳だし、そろそろ覚悟決めたらどう? 政宗さんのこと好きなんでしょ?」

「それはそうだけど……」

まだ心構えができていないというか、未知の世界過ぎてそこまで気持ちが追いつかない。




< 186 / 222 >

この作品をシェア

pagetop