絶対王子は、ご機嫌ななめ

「痛っ!!」

「なんて顔してんだよ。名前呼んだんだ、返事ぐらいしろ」

「あ、そうでした。で、なんでしょう?」

「おまえ、俺のこと怖い?」

「は?」

何なの、一体。『俺のこと怖い?』だなんて、どうしてそんな言葉が出てくるの?

最初はちょっと、そんなことを思ったこともあったけれど。今はイラッとかムカッとかすることはあっても、怖いなんて思うことは全然ない。

逆に好きで緊張したり、身体がこわばることはあるけれど。

もしかして、それを『私が怖がってる』と勘違いしてるとか?

だったらちゃんと話して、そうじゃないことを伝えなくては!!

「政宗さん。私、政宗さんのこと怖いなんて思ったこと、一度もないですから」

あ、一度もなんて嘘ついちゃった。まあこのくらいは許してもらおう。

「そうなのか? なんか時々オドオドしたり身体小さくしてるから、俺のこと怖いのかと思って。じゃあちなみに、俺のことどう思ってんだよ?」

え? ええぇぇぇー!? そんなこと、普通聞く?

しかもニヤリと意地悪気な笑みを見せるなんて、さっきの優しい笑顔はどこへ行ってしまったの?

どう思ってる? なんて……。

どんな扱いされても、どんなにこき使われても。やっぱり政宗さんのことを諦らめられないのは、初めてあった日のことをしっかり覚えていて。

素っ気なくて、態度もちょっと冷たくて、無愛想だったけれど。でもあの時の政宗さんの優しさは嘘じゃない。



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