愛しいカタチの抱きしめかた
――
生徒会室の扉を開け、わたしは一人で廊下に出た。すぐそばにある階段を降りようと角を曲がる。
「――、百瀬?」
階段の踊り場で、百瀬がわたしを見上げていた。
「僕は間宮を信用していないからね。……でもみーちゃんに怒られるのは嫌だから、会話は聞けない位置で何かあったら突入可能な場所がここ」
「……もう。バカ百瀬」
小走りで掛け降りると、百瀬はわたしの少し赤くなった目に気づいた。
「――、こうすると気持ちいいだろ?」
間宮くんと話すことは伝えていたけど、何時何処でなんて行き当たりばったりだったから百瀬も知らない。……どれだけ、待っていてくれたんだろう。わたしの瞼に充ててくれた百瀬の手は、とても冷たかった。
「ひんやりしすぎてて気持ちいい。ごめんね。ありがとう。」
「間宮を、殴ってこなくていい?」
「うん。そんなんじゃないから。それに、邪魔だって追い出されたから、百瀬が今行ったら逆にコテンパンかも」
もうボクは泣いてしまいそうだから――おどけるみたいに、間宮くんはわたしをそう急かして生徒会から追い出した。その心の底を、やっぱりわたしは見ることはできなかった。
「帰ろっか。みーちゃん」