愛しいカタチの抱きしめかた


今日は意図的に二人で帰るようにしたのだと、百瀬は胸を張った。


「付き合い始めた記念に気を利かせろって言って帰らせた」


「……バカ」


「当たり前だと思うんだけど」


「……」


恥ずかしくて何を言えばいいのか俯くと、時々早くなってしまう歩調を、百瀬がわたしに合わせてくれているのを発見してしまい、もっと顔が熱くなる。


その気持ちを振り切ろうと顔を上げたら、すぐ傍に百瀬の顔があって、それが堪らなく幸せだと笑っているみたいに感じてしまって、もう正面の沈みゆく夕日を見るしか方法がなくなった。


「百瀬……予定では、もっとわたしより背が高くなってるはずだよね」


「だったんだけど、たった数センチしか抜けなかったなあ」


「早くしてよ」


そうしたら……


「何で。そうしないと僕は捨てられちゃうの?」


……もう少し、この恥ずかしさは消えてくれる?


「そっ、そんなわけないでしょっ!!」


反射的に手が飛び出し、百瀬の肩を叩こうとしたけど、想像以上の力で阻止された。


そうして、そのままわたしの手は百瀬の手に握られる。


「この辺は人少ないよ?」


「っ、家近くなったら駄目だからね」


「……善処します」

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