愛しいカタチの抱きしめかた


そんなことを呟く百瀬は、けど、それを後悔なんてしていなかった。


わたしも、そう。


「世の中、不思議なことはたくさんあるもの。それでいいんじゃない? うん。いいんだよ」


「珍しく怖がらないし、他にも何かあった?」


「っ、わたしはいつでも怖がってないんだけど?」


「そうなんだ?」




――間宮くんの初恋のことは、百瀬には秘密にした。


きっと、言うことじゃない。


大切な思い出のかけらを知ってしまったわたしは、それを壊さないように、彼がそうするように、扱わなければいけないと思ったんだ。




色々と想い更けりながらでいたら、いつの間にか、イブの日はお化け屋敷に行く流れになっていた。


「えっ、だってみーちゃん平気なんだろ?」


「絶対嫌」


「残念。絶対に怖がるだろうから、僕に抱きついてもらえる予定だったのにさ」


「……」


「ああ。でも――」


もう、そこはわたしの家の玄関の前で、


「百瀬?」


「そんな画策しなくても、もういいんだよね?」


さよならの時間。


「――、うん」


明日も明後日も、一緒にいられる時間はたくさんあるのに、寂しい気持ちが込み上げてきて、百瀬の手をとってしまった。


「うん。僕もおなじだよ」


寂しいのに幸せだと、百瀬は笑った。


その笑顔にわたしもつられたけど、もっと離れ難くなってしまった。







―――――――――――――――――――――
2-6・真夏の夜の、恋の夢
―――――――――――――――――――――




・END・

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