愛しいカタチの抱きしめかた
されるがままに、手のひらや指を弄ばれた帰り道の景色は目に入らなかった。立ち止まり、もうこれ以上は無理だとアピールをすると、百瀬もすんなりと了承してくれた。
その代わりにと。
「だから、クリスマスはデートしてね」
「そんなふうに誘導しなくてもそうするわよ」
「うん。ありがとう――」
――嬉しいと、百瀬は破顔した。
「ケッ……ケーキ、作ってくれるんでしょ」
「ついでに、お正月もバレンタインもホワイトデーもね。そうだ。お花見も忘れてたよ」
「一気に言わないでよっ」
「桜が満開になったら皆でいつもの花見をしようよ。――二人で、学校の桜も愛でに行こうね」
「っ――、うん」
脳裏に浮かんだ人物は、百瀬もわたしも同じだろう。当然だ。桜のことを彼女に教えたのは百瀬で、あんな経験をわたしたちはしたのだから。
「図書室を飛び出せて、あの子がちゃんと教室でも過ごせるように、桜や、他にも楽しそうな外の話題を話してたんだけど。――見当違いだったかな」
「ううん。そんな百瀬に、たくさん救われていたよ。きっと」
「なら、良かったんだけどね。――にしても、僕たちは、色々普通に受け入れてしまったね」