マルメロ
「茜さん――でしたか――」
彼の気持ちを遮り、座っている茜を、品定めする様に覗くミレイ――。
「じぃーーっ――」
「な、何ですか――」
動揺する茜――。
「今日は、三つ編みお下げですねぇ――ふむふむ――」
「えっ、えっ――」
「ヘアスタイルよし、全体の佇まい――よし――」
「むむっ、しかぁしっ――惜しいっ――リーチだねっ――」
ミレイの水晶体が、彼に答えを求める――。
何を言っているのかわからず、キョトンとしている茜――。
「眼鏡って事ですか――」
「正解っ――さすがは伝説のお姉様の弟――」
「この人、知ってる――」
別に、「弱み」ではないけれど、姉の存在、その弟である彼の背景を知るミレイが、少し恐ろしく感じ、無意識に背筋が伸びる――。
「私が1年生の時、お姉様は3年生で生徒会長でした――」
「お姉様の一挙手一投足の全てが伝説――」
「ああぁ、愛しいお姉様っ――ご卒業以来お逢いする機会がありませんけれど、お元気にしていらっしゃいますか――」
祈り、瞳を潤ませ、彼に尋ねるミレイ――。