ミク。
「……………ねぇ、ブラック、」

まともに私を見ようとしてくれない主様に、過去でしていたように話し掛けてみようと試みたけれど、どんな会話をしたら良いのか思いあぐねているうちに背を向けられてしまう。
そんな私の瞳からは感情センサーによって流される涙が音も無く静かに流れ落ちてくる。しかし、

『…ついておいで、フィン。』

もしかしたら、二度と呼んでくれないかもしれないと思っていた名前を呼ばれた時、涙が止まった。でも喜びに土を蹴って彼の腕に腕を絡めた私が案内されたのは過去には無かったハズの地下室で、そこは奥まで行けないくらいの酷い跡を刻んでいた。

『昔、ここで何かがあったらしい。私の記憶が消えた元凶だ。君が…‥フィンが行った過去に、この部屋もあったか?』

私は無言で首を横に振った。主様は大きく溜め息をついて諦めが見える表情でこちらを見るともなく見ながらこう話してきた。

『君が言っているのも私の無くした過去の記憶だろうが、私が一番知りたい過去じゃ無い‥‥‥ここにこそ何かがあった‥‥多分フィン。君は初恋だったんだろう。若気の至りって奴だ‥‥‥‥。いや、むしろ諦めろって事だろうな、私の夢は』
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