ミク。
春と、幸せで、甘くて、キラキラした入浴時間を過ごした後、また体調を悪くさせない為に温かい格好をさせてやり、胸に抱き上げてバスルームを出て行くと、台風が過ぎた為、後始末が済み次第向かうつもりなどと電話をして来た本人らしい医者が簡単な診療道具入りの鞄を持って来ていて朝食という名の昼食の準備が終わったと見える珠里夜と何やら話をしていたが、バスルームの引き戸が開いた音でふとソイツがこちら側に視線を向けて来た。とたん、仰天したように飛び上がるなり今仕方まで立ち話をしていた珠里夜の事も、一人ではフラフラしてしまって立つのが困難だと一目で分かる春の事すら差し置いて、持っていた診療道具入りの鞄を放り出しながら大変馬鹿げた事を浴衣姿で漆黒の長い髪から煌めく雫をしたたらせていた冬に向かって語り掛けて来る

[あ、あ、あぁ貴方は、秋冬の神様ですね!はああぁ!!!昨夜はこちらで一夜でしたかぁ]

「っ……、」

[ま·さ·か·の。妖怪とですかぁ?またはその病弱で有名な春神様で幼女プレイでしょうかねぇ?まぁ、どちらでも歓迎致しますので本日は私めを~お、おぉ願いしたく存じますぅ]

この時、彼によって優しく抱き上げてもらっていた春は瞬時に気が付く。
病気でも無いのにハァハァしながら興奮ぎみで意味不明な事を口にしている目前の白い服を着ている男のせいで、さあっと血の気が引いてしまって、みるみるうち恐怖による緊張と他者に言い出せない自分だけの秘密とで冷たくなって、背筋に鳥肌を立ててしまった彼に、気が付く。
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