今日も君に翻弄される。
体がひどく、熱かった。


「葵」


どうしたらいいのか分からなくて、俯くわたしを、和泉くんが優しく呼ぶ。


「お詫びに甘いもの奢るよ。何がいい?」

「カフェオレ」

「あ、そこは即答なのか」


う、と詰まるも、やっぱり顔が上げられないわたしの手を少し引いてみせて。


「顔、上げてくれないと、もう一回キスするよ」

「っ」


上げた。

もちろん上げた。


辛い、と眉をしかめながら、和泉くんが笑う。


「大丈夫、今はしないから」

「今は、って……!」


今すると辛いでしょ、なんて余裕だ。


わたしは、いっぱいいっぱいなのに。


「カフェオレ奢って、ケーキかチョコでも食べたら、しようかな」

「い、いいよ……!」


ずんずん逃げるみたいに先を歩く。


和泉くんはほっとして隣に並んだ。


……そっか。

わたしを歩かせるために言ったのか。


…………甘いもの食べて、人がいないところでならいいかなあ、とか。


結構真剣に期待しちゃったじゃないか和泉くんの馬鹿!


憤慨したわたしが、ぎゅうぎゅう手を握れば。


ぽんぽんと、和泉くんの手が、いつものように頭を往復した。
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