名前を教えてあげる。
「…だけど、子供がいるんじゃ、我慢するしかねえな……同居してるわけじゃねえし」
こんな女の内輪話には、慣れていないに違いない。哲平は少し戸惑ったように言う。
携帯カメラで撮った写真を見られてしまった件は伏せ、2人の女に身を引くようにと責められたことも告白した。
「あの人達に、あんなこと言われなかったら、私、流産しなかったかもしれない…」
いきなり感情的に目を潤ませる美緒に、哲平は明らかに困惑していた。
「過ぎたことを悔やんでもな。ま、なんとか当たり障りなく、うまくやるんだな…」
そう言って、哲平は手元にあった煙草に手を伸ばした。
(もっと気の利いた慰めのセリフないの…!)
さっきから似たようなセリフばかり返ってくるので、美緒はプツリときれた。哲平のもっと苦手な話題に変えることにした。
「ねえ、哲平の香水って、ウルトラマリンでしょ?」
甘エビの唐揚げを指で摘み、口の中に放り込んで訊く。
ふーっと紫煙を吹きながら、
「ああ。よく分かるな」
面倒臭そうに哲平は頷いた。
「まあね〜私、その匂い好き!それって、彼女セレクト?」
「ちげえよ。パチンコでゲット」
「ねね、彼女とは結婚しないの?」