名前を教えてあげる。
今日は早朝7時から五郎の畑の手伝いをした。もう季節は初冬だ。

ここまで寒くなるとは思わなかったから、恵理奈は雅子の娘由美の薄手のダウンジャケット、美緒は雅子の毛糸のカーディガンを借りた。

軍手が朝露にしみると、指先がジンジンと冷えてくる。それでも、大根と長葱を収穫は楽しかった。


午後は恵理奈と母屋でゆっくり過ごすことにした。
五郎は新鮮な野菜を車で20分ほどの直売所に卸しに行った。


五郎は、いつも美緒を気遣い、すぐ「休めよ」と言う。
まるで、これまで出来なかった分を補うかのように。


昼のバラエティ番組が賑やかな笑い声を立てる。


「えーりーな、今日は美味しいおやつがあるんだよねっ、そろそろいっちゃう?」


美緒はウインクした。


「うん!お腹空いた!」


待ってましたと言わんばかりに恵理奈が目を輝かせる。


朝の仕事を終えて戻ってくると、家の前に白い軽自動車が停まっていた。
ちょうど、雅子が来ていてを五郎の家まで草餅を届けにきてくれたのだった。


『庭にね、生えているヨモギを採ってきて、昨日の餅にまぜたんよ。柔らかい葉っぱのとこだけ摘むの。小豆もあったから、あんこも作ったわ。つぶあんだよ。美緒ちゃんと恵理奈ちゃん、食べてみて。
口にあわんかもしれんけど、おやつにどうぞ!』





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