恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
だから黙っていると、答えない私にイライラを募らせた由宇が、私の顔を掴んで無理やり視線を合わせるっていう力技に出てきて。
睨むように見て「聞いてんだろ、答えろ」と脅す。
最初に悪かったのは由宇だと思ってるけど……事を大げさにしてしまったのは全部私のせいだっていうのも分かっているから、自分の不甲斐なさや要領の悪さにまた涙が溢れだした。
もうやだ……。カッコ悪い。
「だって……由宇と仲直りしたかったんだもん。
だから、由宇の好きなチョコ買って渡して仲直りしようと思って……。
由宇が悪いけど、私も悪かったからって」
ボロボロと涙をこぼしながら言うと、由宇は私の目から溢れ出す涙を、顔を覆ったままの両手で拭いながら顔をしかめる。
「なんで俺が悪いんだよ」
「私の心配をはねのけたでしょ」
「いつの話?」
「今日の話! 社内でうちに居候してるとかそういう噂とか広まっちゃったら、由宇の立場が悪くなるかもしれないじゃない!
それに、お父さんは時期社長だとか言われてるから、ごま擦ってるみたいに言う人もいるかもしれないし……。
由宇がこれからする仕事をきちんと評価されなくなるのは嫌だと思って、だから関係を秘密にしようって言ったのに由宇聞いてくれないし……」
由宇は少し驚いたような顔をして、「おまえ、そんな事考えてたのか」とこぼす。