グッバイ・メロディー


「彰人くんと寛人くんがかっこいいのはよーく知ってたけど、まさかこんなイケメンがまだ隠れてたなんて今世紀最大の事件なんじゃない? ちょっと、洸介ももっと頑張りなさいよ!」


男前の直おじちゃんと美人な清枝ちゃんの遺伝子をしっかり受け継いでいるこうちゃんだって、じゅうぶんかっこいいよ。

そう言いたいのに、今度は両方のほっぺをむにむに引っぱられているからうまくしゃべれない。


かわりにトシくんにすべてを託していると、ドアのふちに体重を預けた清枝ちゃんがふと言葉を止めて、ありがとう、としみじみ言ったのだった。


「彰人くんも寛人くんもそうだし、トシくんもすっごくいい子で、こんな素敵な子たちが洸介の傍にいてくれてること、ほんとに嬉しい。もちろん、きっちゃんもね。いつもありがとうね」


散らかったパーティー後の惨状を見つめる瞳がとても優しく揺れていて、胸のいちばん奥のほうがぎゅっと切なくなった。


「洸介、誕生日おめでとうね。今年は日付変わってからになっちゃった」


清枝ちゃんは、こうちゃんを産んだ日を絶対に忘れたりしない。


どんなに忙しい毎日でも。

どうしてもお仕事に行かなきゃならなくても。


清枝ちゃんが一年のうちで4月28日をいちばん大切に思っていること、17回もこの日を迎えているんだから、こうちゃんもきっと知っているはずだよね。


「ありがとう」


こうちゃんはやっとわたしの頬をおもちゃにするのをやめて、静かに答えた。


よけいなことは言わないこうちゃんのその一言には、たくさんの気持ちが詰まっているんだって思った。

そういう、言い方だった。

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