グッバイ・メロディー


「ファンです! 対バンいつも行ってます!」

「どうしてもチケットとれなくて“炎天下フェス”は行けなかったんですけど……!」

「CDも2枚とも持ってますー!」


勢いに圧倒されてとりあえずうなずくしかないこうちゃん、「握手してください!」まではなんとか対応できても、「サイン欲しいです!」で完全にノックアウトだった。


「サインって?」


本気でそんなことを言うんだからファンのコのほうが困ってしまっているよ。

差し出されたリングノートには『瀬名洸介』と結局ふつうに名前を書いていたけど、これでよいものなのかと、なぜかわたしのほうが申し訳ない気持ちになってしまった。


「今夜も楽しみにしてますっ!」


毎年、軽音部のために設置しているグラウンドの野外ステージ。

その場所で今夜、あまいたまごやきがスペシャルライブをしてくれることが決まっているのだ。


「どうもありがとう」


ベーシストとギタリストを生徒に擁している学校側がレーベルに掛け合ってくれたらしい。

俺たちがやりたいわけじゃない、とこうちゃんは興味なさげに言ったけど、わたしは校長先生に握手しに行きたいくらいうれしいよ!

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