グッバイ・メロディー
「何時からだったっけ?」
「18時! あした終業式であさってから冬休みなのに、こうちゃんもトシくんも、誰ともゆっくり話したりせずに急いで下校しちゃってたよ」
「あーそっかあ、学生も大変だね」
ひそかに制作を進めていたミニアルバムがついに発売するのでまたラジオに出演することになった、
という報告をこうちゃんから受けたのは、ほんの3日前のこと。
そして、その日がクリスマスイブだというのにやっとわたしが気づいたのは、ついきのうのことだった。
「ていうかさ……ラジオはおまけで、きょうのメインテーマは季沙とゆっくり話すことなんだけど」
いつものお酒じゃなく、わたしと同じほうじ茶を飲んでいるみちるちゃんが、目を伏せながら遠慮がちに口を開いた。
思わず背筋がぴんと伸びる。
「いろいろ、報告できてないままだね。心配してくれてるのわかってたのに、その思いやりに甘えちゃってごめんね」
「ううん……」
ダメだな。
冬の始まりごろ、なにもしなかった自分をあんなに恥ずかしく思ったのに。
いざこんなふうに切り出されると、やっぱりなにを言えばいいのかわからない。
「勝手にしゃべるからさ、てきとうに聞いててよ」
頼りなさすぎるわたしの心を察してか、みちるちゃんは少しフランクな感じに笑った。