グッバイ・メロディー
「でもよりを戻したいとか、そういうんじゃないの。そういう現在進行形の気持ちじゃなくて。なんだろうね、古いタイムカプセルのなかにしまってある宝物みたいなさ。いまとなってはただのガラクタに違いないけど、どこかでずっと尊いままの存在、みたいな。むずかしいね」
「ううん、なんとなく……わかるよ」
初恋もまだのわたしに、いったいなにがわかるというのだろう。
でも、とてもわかると思った。
だって、痛いくらいに伝わってきた。
彼が、すごく大切な存在だったということ。
あまりにかけがえのない気持ちだったということ。
まぎれもなく、一生に一度の、どうしようもなくなるくらいの恋だったんだってこと。
そしてそのうえで、みちるちゃんはアキくんのことを、とても好きになったんだよね。
わかったよ。
ちゃんと好きになったから、怖くなって、手を離してしまったんだ。
「アキくんは脇坂さんじゃないよ」
勢いあまってよけいかもしれないことを言ってしまった。
大きな目が驚いたようにしばたいている。
「アキくんはみちるちゃんを置いていったりしないよ。絶対、どこまでも連れてってくれる。ううん、もしかしたらアキくんのほうから『いっしょに連れてっていい?』ってお願いされちゃうかも」
たぶんいま、すごく無責任なことをべらべらしゃべっている。
そういう自覚ならじゅうぶんすぎるくらいある。
わたしはアキくんじゃないし、だからアキくんの気持ちなんてわからない。
彼についてわかったようなことを語れるほど、そんなに詳しいわけでもない。
だけど、どうしたって、そう言わずにはいられなかった。