グッバイ・メロディー


アキくんは、こうちゃんにできたはじめての“友達”だから。


かたくなに他人に心を開こうとしてこなかった、いまよりもう少し幼かったこうちゃんをずっと待ってくれた、はじめての存在。

その世界をそっと押し広げてくれた人。


こうちゃんが最初にアキくんの話をしてくれた日、

彼を『アキ』と親しげに呼んだ日、

家に連れてきた日、

ぜんぶ覚えている。


こうちゃんからアキくんを紹介してもらったとき、世界にはこんなに素敵な男の子がいるんだって思ったんだ。

すごくすごく、感動したんだ。



「うん、あたしもそう思う」


どこか堪忍したように、力を抜いて笑う。


「すごく愛されて育ってきたんだろうなーって思う。まっすぐに愛されてきたから、まっすぐに愛する方法を知ってる。それで、それを知らない、貧しい誰かを的確に探し当てて、自分がもってる愛情を惜しみなく分けてあげられる」


自分は探し当てられた側の人間だと、みちるちゃんは言った。


「もう少し考えさせてって言ったよ」

「そしたら、アキくん……なんて?」

「永遠に待つってバカなこと言うから、春までにはなんとかしようかって約束した。まあ、それまでにほかに好きな女を作るならそれはそれでヨシだし」

「アキくんはそんなこと絶対しないよ!」

「ねー。いっそそうなってでもしてくれたらラクチンなのにね」


いつもの冗談みたいな、だけど半分くらいは、たぶん本気の温度感。


誰かを好きになるというのは、もしかしたらとても面倒で、とても苦しいことなのかな。

いくつもの恋をしてきた人だけが知っている、たぶんそれは、わたしの知らないむこう側にある感情だ。

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