グッバイ・メロディー


やがてこちらの視線に気づいたこうちゃんがやって来て、自然な動作でわたしの手を取った。


そのうしろから、アキくんもついて来る。

そしてみちるちゃんの細い腕を掴み、なんにも言わないで横顔だけで笑うと、そっと引っぱっていく。


「このまま初日の出見にいこうぜ!」

「絶対に嫌だ。帰ってゲームする」


超名案って感じに言った兄の提案を即却下したのは、いまにも帰らんとして背をむけかけている弟。

トシくんが「おまえらは今年もブレないな」と笑う。


「なんかいいね、こういうの」


つながっている左手の先を見上げると、すっと鼻筋の通ったきれいな横顔が、とてつもない大あくびをした。


「こうちゃん、眠い?」

「ん」

「帰る?」

「ん」


大変だ!
超がつく低血圧のこうちゃんはこうなると本当になにもできなくなる。

冗談じゃなく、いまここで、立ったままでも、歩きながらでも、ぐっすり眠ってしまうはずだ。


「アキくんゴメン、わたしこうちゃんのこと連れて帰らないと!」


エーとくちびるをひん曲げかけたのもつかの間、フラフラというよりふわふわしているギタリストを見た瞬間、ボーカルはしょうがねえって顔をした。


「じゃあニコイチ幼なじみはイチ抜けな!」


なにそのあだ名!
って、いっしょにつっこんでほしいのに、半分寝ている耳にはなんにも聞こえていないみたいだ。

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