私がいた場所。
未来とは違う京の町。
建物にはあまり色はないが賑わっているところは変わらない。町を歩く人は皆着物でやっぱり江戸時代にいるということを実感した。きょろきょろと回りを見てしまう私の首根っこをつかんで沖田さんはひとつの店に私を放り入れた。
「っわ」
「ここなら安いし、質もそう悪くないしいいんじゃないですか?」
「だな、じゃ好きなように見ていいぞ」
「はい!」
まずは寝巻きとして肌襦袢がほしいです…。あと、ここまで来て思ったのだが…
「私、袴がいいです」
「袴?その方が男には見えるけどよ、」
「別に着物でもいいんだよ?」
「小さい歩幅になれていないんです」
浴衣と同じですごく歩きにくいのだ。この時代の女性と比べると大きな自分の歩幅には多分袴のが合っている。




「これとこれとこれはどうだ?」
原田さんが指したのは薄紅色と灰桜色と菖蒲色のものだった。
「赤ばっかりじゃないですか。これは?」
沖田さんは勿忘草色と萌黄色を指した。
「あんたはどれがいいんだ?」
「うーん、どれも素敵で…」
頬に手をあてて悩んでいると沖田さんの呆れた声がふってくる。
「君、結構図々しいね」
「えっ?」
「ま、これくらいいいだろ!」
「俺も自分がすすめた分くらいは出しますよ」
「え、え?どういう…」
二人が話していることがわからなくて原田さんの袖を掴むとそこで待っとけ、なんて言われて。



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