私がいた場所。

「本当に心当たりはないのか?」
「う、うーん…」
「なんだその微妙な答えは」
「いや…私、前沖田さんに告白されてるんですよ」
「っ…!?!」

今度は斎藤さんがむせ返るほうだった。

「ちょっと斎藤さん、急に吹き出さないでくださいよ」

と、自分のことは棚に上げていってみたがどうやら彼の耳には届かなかったらしい。

「っ…そうか、総司がお前に…」

どこか遠くを見た斎藤さんに首を傾げた。
私もつられて宙を見るが綺麗な空が広がっているだけだ。

「あいつは試衛館時代にそこでつとめていた娘に言い寄られていてな。修行中のみであるからと断ったらしいが」
「…沖田さんってちゃんと真面目なこというんですね」

失礼な話だが今の彼を思い浮かべるとやはり変な感じがする。
でも、誰でもいいわけではないのか。彼はしっかり私を選んでくれたのか。

「この話には続きがある。その娘は気が強くてな、好いた人に受け入れてもらえないなら、と死のうとしたらしい」
「その人もなかなかすごいなあ」
「近藤さんがなんとか止めに入っていい縁談を持ってきてくれたおかげで場はおさまったがな」
「沖田さんそんなところでも近藤さんに恩があるんですね」

そりゃあ、あそこまで近藤さん好きになるのも仕方ないかもしれない。恩師であり兄のような人であり心から尊敬できる人なんだろう。

「ああ。それもあったから総司がお前に、ときいて驚いたのだ」
「なるほど。うーん、でも今回のことそのことなんですかね…。少し前までは普通だったんですけど」
「それは総司ではないとわからないが。もしお前と総司がそういう仲になったとして、お前はあの事を言うのか?」
「あのこと?」
「お前がどこから来たかという話だ」

急にふられた話にどきりとした。いや、この話は前にもしたがやはりなにか隠し事をしているというのはつらい。
それを知っているのは土方さんと斎藤さんだけだ。近藤さんは話し終わってから部屋に入ってきたし二人とも言いふらすような人でもない。いつかはみんなにも…と思うばかりでどこか決心がつかずここまで来てしまった。

「遅かれ早かれあいつらは何か隠されていることに気付くと思うぞ」
「そう、ですよね。話したほうがいいですよね」
「急かしているわけではない。だがそろそろ信用してやってくれ。お前のいいと思った時でいい」
「はい」


傾きかけた夕日はさっきまで青だった空を紅に変えて帰り際私たちの足取りを早めさせた。











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