私がいた場所。
廊下を進むと話し声が聞こえてなにやら言い争っているような。
「山南くんらしくないじゃないか」
「なんのことです?」
「土方くんと同じように頭のきれる山南くんなら西本願寺、賛成だと思ったんだが?」
「僧を武力で押さえつけるようなことは道徳に反しています。自らの利益のために仏の使いを脅すなど…」
「心に留めておこう。しかし、時には大胆に行くことも大切であろう。では失礼する」
「…。」
伊東さんが行ったことを足音で確認してから私は廊下の角からひょっこりと頭を出した。
「山南さん」
「…どうしてっ」
「え、?」
「…いえ。どうしましたか?東條くん」
「土方さんみたいに眉間に皺よってますよ?」
山南さんが怖い顔しているのは嫌だ。いつも柔らかい笑みを浮かべているのが山南さんなんだから。
「気を付けます。東條君は今回のことどう思いますか?」
「難しいですね。私も山南さんと同じで強行突破みたいなのは嫌なんですけど…でも他ってなるとどこも浮かばないですし」
「…あなたはどこか、すべてわかっているかのような…不思議な雰囲気がしますよね。きっと今回のこともどうなるかわかっているんでしょう?」
「え、と…」
「すみません。気にしないでください。ただの戯言ですよ。では、私も戻りますね」
「あ、はい…」
何かを諦めてしまったかのような彼の目には陰りが見えたけど、私は私で動揺していてそれ以上はなにも話せなかった。