私がいた場所。
「どんな仕事でも、覚悟はできています」
「ふーん…せやなぁ、俺も監察方としての心得的なもんを一つ一つ教えてやりたいところやけど今は忙しゅうてなぁ」
うーん、と何故か可愛らしく人差し指を口元にそえながら山崎さんは困ったように唸った。
「う~ん…あ、そや。自分芸鼓やってくれん?」
「芸鼓ですか?」
「一番最初の仕事としてはええと思うけどな。今の俺みたいにどっかの天井裏に忍び込むっちゅうのは結構上級者向けなんや。一番やり易いのは変装して市中に紛れて耳をすますこと。でも、ま、せっかく女手が入ったなら女しか行けへんところに言って欲しゅうてな。」
「なるほど…わかりました」
「…随分と聞き分けええなぁ。島原ってどういうとこかわかってゆうとるん?」
「わかってますよ。体を売ることもあることは。それでも私は新選組のためにうごきたいんです。使えるだけ使ってください」
処女ではないのだし、ここにおいてもらっていなかったらどうせやっていたであろうことだ。
奥歯をぐっと噛み締めてまっすぐ山崎さんを見たところで急に襖が開いて入ってきたのは沖田さんだった。
「それ、どういうこと…?」
どこか怒気を含んだ声音でいつものにやにやとした笑いは浮かべていない。
「君は雑用でしょ?なんでそんなことしなくちゃいけないのさ」
「先程土方さんに正式に新選組隊士として認めてもらいました。…沖田さんどうしてそんなに怒っているんですか?」
怒っているのは分かるけれど何に怒っているかはわからない。
「山崎くんもなにいってるの。この子に芸鼓なんて…」
「いやぁ~、こればっかりは本人の意思ですし?」
「…君、有能らしいから土方さんには気に入られてるみたいだけど俺は君のこと、嫌いだよ」
「そお言われてもなぁ…。まぁ、東條のやる気があるんやったら、また話聞きにきてや」
「あ、はい」



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