私がいた場所。
「あの、話を続ける訳ではないのですが、この中で一番女慣れしているのは誰ですか?」
「女慣れ?っつーと佐之か?」
「俺と新八よりはそうじゃねぇか?言い寄られてることもよくあるし」
「お?俺がなんかあるのか?」
…原田さんは絶対罪な男だと思う。
この笑顔に振り回された女の人が今までに何人いるのだろうか。
「では、原田さんにお願いがあるのですが」
「おう、なんだ?」
「私、着物に慣れてなくて多分一人だと着れないので手伝ってくれませんか?」
案の定部屋は一瞬水を打ったように静まり返った。はじめに口を開いたのは原田さんで。
「俺はかまわねェけどよ…いいのか?」
「はい、お願いします」
「い、いやいやいやいや!いいのかよっ!?」
「つか佐之さんずるくねぇ!?」
「平助、本音がもれてんぞ」
肌襦袢がなくて晒しなのは少し恥ずかしいがそんなことを言っていては着られない。できたら襦袢を今日にでも買ってもらって明日からは着るようにしたい。だからはやめに一度着せてもらっておきたいのだ。
「手間をかけさせてしまいますが…」
「や、いいぜ。役得だしな。じゃあ、移動するか。平助、あんがとな」
「ありがとうございました。失礼します」
部屋をでる前に呆けている二人に頭を下げると再び原田さんを追った。




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