不機嫌な彼のカミナリ注意報
 部長がその男性になにか言葉をかけようとして振り返ったとき、ちょうど私を視界の端に捉えたようで、ハッと驚いた表情に変わった。

「あぁ、お、緒川さん」

 部長は顔を引きつらせながら、あわてるように私の名を呼んだ。

 きっと今の話を聞かれたと思ったのだろう。

「ちょうど良かった。先に紹介するよ。総務部から異動になった緒川寧々さんだ」

 部長にそう紹介してもらったので、私はふたりに近づきつつダンボールを足元に置いて襟を正した。

「緒川寧々です。今日からよろしくお願いします」

 精一杯笑顔を作って、ペコリとおじぎをする。

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