不機嫌な彼のカミナリ注意報
 風見さんが笑っている……
 風見さんが、瀬戸さんを見て笑顔になって……

 そう考えたらとてつもなく切なくなった。
 途端に胸がギューっと締め付けられる。

 風見さんが笑みを向ける女性は、数少ないのを知っているから ―――

 私は無言でおもむろに立ち上がり、飲み物を取りに行く振りをしてその場から逃げた。
 見ていたくないと思ったから。

 ――― 風見さんが、瀬戸さんを見つめている姿なんて。

 広い公園をぐるっとひとりで散歩したあとにトイレに寄り、化粧が落ちてドロドロになっていた顔を適当に修正した。
 そして、戻ってきた私はコンロの周りの片付け作業を始めた。


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