不機嫌な彼のカミナリ注意報
「大会議室が空いてたから、とりあえずそこを押さえたらしいわ。それは良かったんだけど、テーブルの配置やお茶出しに、
総務だけじゃ手が足りないからって手伝ってほしいってこっちにも連絡が来たの」

 基本的に専務室への来客のお茶出しは、専務秘書の仕事だ。
 だけど、例えば役員会議だとか、広い会議室を使う場合の大人数のお茶出しは、総務が行っている。

「緒川さん、悪いんだけど行ってくれるかな? 緒川さんは元々は総務だし、お茶出しも慣れてるでしょ? 私が受けたのに悪いんだけど、私……今日は用事があって定時で帰りたいの」

 先ほどの笹岡さんと同じように、両手を顔の前で合わせて懇願される。
 私はこんなふうに頼まれるとどうしようもなく弱い。

「……わかりました。行ってきます」

 私も自分の仕事が残っているからタイミングが悪いけれど、先輩の頼みなのだから仕方ない。
 風見さんが居ない時で本当に良かった。


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