美狐はベッドの上で愛をささやく

「っつ!!」

妙に感覚がリアルだと思っていたけれど、まさか、夢の中で狐だと思って抱きしめていたのって、現実では紅さんだったのっ!?





「ご、ごめんなさいっ、あの!! わたしっ……」



ああ、何をやっているんだろう。


ベッドの上で、会ったばかりの人の背中に手を回すとか!!


恥ずかしい。


穴があったら入りたいくらい恥ずかしい。



…………どうしよう。


朝っぱらから、こんな汚らしい奴に抱きしめられるなんて紅さんもいい迷惑だよね。



……。

もう……イヤだ…………。



「ふぇ…………」



あまりにも自分が情けなさすぎて、両目に涙が溢(アフ)れてきた。


口はへの字になるし、目の前にいる紅さんの綺麗な顔がぐにゃりと歪んでいく……。




「ごめんなさぃ…………」


もう、最悪だ……。




「紗良ちゃん? なぜ、泣いているの?」


< 129 / 396 >

この作品をシェア

pagetop