美狐はベッドの上で愛をささやく

「おはよう紗良(サラ)ちゃん、良く眠れた?」

紅さんもわたしと一緒で寝起きのはずなのに、とても爽やかに微笑む。


まるでこの、朝の日差しみたいに……。




「あ、あの……えっと……あの……」

もしかして、寝顔、ずっと見られていたの!?




とても綺麗な紅さんに、自分の寝顔をずっと見られていたのかと思うと、恥ずかしくてパニックになる。


怖い体験もしていないのに、体がカチコチになってしまう。



対する紅さんは、わたし心情を知ってか知らずか、口角を上げてニコニコと微笑んだままだ。



相変わらず綺麗な笑顔に、わたしの胸がトクンと高鳴る。





……どうしよう。





焦りからか、汗が出てきた。

わたしの額から流れるヘンな汗を拭おうと手を動かせば……。


夢の中で狐を抱いていた、わたしの手はあろうことか、紅さんの背中にまわっていたことに気がついた。


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