美狐はベッドの上で愛をささやく

ついには紅さんの裾を強く握った。


意識がまた……途切れていく……。




……ああ、まただ。


紅さんから香ってくる薔薇の匂いを嗅ぐと、頭がボーッとしてくるし、何も考えられなくなる。



そうしてわたしは、紅さんにすべてをゆだねることになるんだ……。






――その日から、わたしの孤独な日常は消え失せ、明るい日差しの中にいるような、幸せな毎日を送れるようになった。


夢の中では銀色の狐と一緒。


現実世界では紅さんと一緒に生活をしていた。


そのおかげで、ひとりで飲み物も飲めるようになった。

……と、思う。



あやふやな言葉になるのは、紅さんがわたしひとりで飲ませてくれないからだ。


いい加減ひとりでできることはしなくちゃいけないって思うのに、紅さんはいつまでもわたしを甘やかしてくる。



わたしの髪の毛だって……。

お風呂で、紅さんに洗ってもらっている。


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