美狐はベッドの上で愛をささやく

はじめて言われた時はとても恥ずかしかった。

今でも顔は熱くなるし、恥ずかしいという気持ちは消えない。



まだまだ慣れないし、けっして『うん』とはうなずけるようにはならないけれど……。




だけど微笑む紅さんに、わたしも笑い返すくらいはできるようになった。


わたしが笑い返せば、そこから紅さんの一日がはじまる。



見上げれば、頭の上にある目覚まし時計は朝7時を指していた。

紅さんがベッドから体を起こせば、わたしも紅さんに続いてベッドから離れる。


わたしの体調は紅さんの看病のおかげでほとんど回復した。

霊体に悩まされ、一睡もできず、飲み物もろくに口にできなかった、衰弱していた当初とは違う。


歩いてもよろけることはなくなったし、何より、ご飯もきちんと食べられるようになった。


朝起きて、着替えて、ご飯を食べて、お風呂に入って眠る。

以前では考えられなかった普通の生活。


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