美狐はベッドの上で愛をささやく

どうにもできなくて、立ったまま呆然としていると、紅さんの手が伸びてきた。



わたしの背中にあたたかい紅さんの手がまわる……。




「あ、あのっ!?」

気がつけばわたしの体は、背中からすっぽりと紅さんに包まれていた。


びっくりして見上げれば……。


「紗良ちゃん、何も気にする必要などないんだよ。わたしは君がとても好きなんだ」


…………。



好き。


紅さんの告げられたその言葉が、わたしの胸を震わせる。


「く、れないさ…………」

「大丈夫、君は汚れなき天使のように美しい」


耳に口をくっつけられて放たれた言葉は、ゆっくりと全身に行き渡る。



やがて、体があたたかい言葉でいっぱいになると、瞼(マブタ)が熱くなった。



「……くれないさっ……」

そして、また……わたしは泣いてしまうんだ。


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