美狐はベッドの上で愛をささやく

だけど……。


でも……。



今だけ……。



わたしを好きになって、なんておこがましいことは言わない。

ただ紅さんの傍にいたい。


わたしの想いは報われなくていい。

この結末は、どう考えてもハッピーエンドにはならないのは知っているから……。

だからせめて、今だけでいい。

紅さんの傍にいたい。





だったら、今まで通り、何もなかったようにふるまえば、それでいい。



神様、わたしは醜い化け物だけど……今だけでいい。



少しだけ、夢を……みさせてください。



わたしは紅さんの背中に腕をまわして、広い胸に体を預けた。



今は――今だけは……優しい体温が、わたしを包んでくれる。



わたしは優しい紅さんにすべてをゆだね、強く目を閉じた。

やがてやって来るだろう、絶望から逃れるために……。


< 184 / 396 >

この作品をシェア

pagetop