美狐はベッドの上で愛をささやく

「ばかな……。

だとしても、俺の攻撃からその人間を突き放すまでの時間はあまりにも短かった……避けられるハズは……」





――そう。


そうだ。

わたしが紅さんに突き飛ばされた時、紅さんは木にもたれていた。


そこから蜘蛛の攻撃を受けるまでの時間はかなり短い。


紅さんは、ほんの数秒の間に回避したっていうことになる。



そんなの……今までわたしが目にしてきた霊体でも見たことがない。



「わたしたち一族は、俊敏な動きが特徴でね。

君たちのような生き物と一緒にしないでほしいな」




蜘蛛を見下ろして放つ微笑みは、今まで――わたしが知っている中での優しい紅さんじゃない。



静かな、見たことがない、怒りに溢れた笑みだった。


「そ……そん……」


「さあ、わたしの紗良を殺そうとした罪だ。覚悟はいいね」


今ならわかる。

紅さんが言う、『わたしの紗良』という意味が……。


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