美狐はベッドの上で愛をささやく

体にすり寄ってくる狐の頭を撫でると、スッと目を細めて、もっと撫でてほしいと言わんばかりに身動きもせず、ジッとしている。


その姿がとてもかわいくて、思わずクスクスと笑う声が、口から漏れてしまう。


しばらく頭を撫でていると、狐から薔薇の香りがした。




――えっ?


この匂いって……。




そこで気がついたのは、この狐がいったい何を示すのかっていうこと……。




――狐。


――真紅の瞳。



――そして、薔薇の香り……。



このみっつのキーワードは、わたしの中にあった疑問の答えになった。



お父さんがこの世界からいなくなった後、霊体に襲われた時に匂った薔薇の香りと、そして、大きくて綺麗な狐――。




この狐は…………。




その瞬間だった。

わたしのみぞおちが熱くなって、それは次第にお腹から胸、胃、そして喉まで押し上げてくる。


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