美狐はベッドの上で愛をささやく
「あまりそういうことを言わないで。君の甘い声が聞きたくなってしまう」
気がつけば、体に巻き付いていた上掛け布団はベッドの上に置き去りになり、わたしは紅さんの膝の上で横抱きにされていた。
あまりの衝撃に何も考えられなくなって、そのままジッとしていると、わたしを射抜く視線に気が付いた。
……見上げれば、赤茶色の瞳と絡まり合う。
たったそれだけ……。
なのに、わたしの体はすぐに熱を持ちはじめる。
そして、思い出されるのは昨夜の出来事――。
蜘蛛の霊体に襲われ、手慣れた様子で霊体を退治した紅さん。
そんな紅さんは、実は妖狐というあやかしだったということ。
だけど、そんなことはわたしにはとってはどうでもよくって……。
大切なのは、わたしを花嫁だと言ってくれた、彼の言葉と、与えられるこのぬくもり。
ただそれだけ……。
「あの、甘い声って……?」