美狐はベッドの上で愛をささやく
紅さんはそれを知っていて、あえて言っているの?
……というか、うなずくのやめようよっ。
みんなの誤解を解こうよっ!!
顔は生姜湯が入った湯のみに固定したまま、目だけを上げて(ニラ)睨めば、ふんわりと微笑む紅さんの表情があった。
「紗良、そんなに頬を染めて……上目遣いだなんて……。君はわたしにいったいどうしてほしいのかな? 誘惑しないで」
紅さんの指がわたしの顎(アゴ)を捉えると、湯のみから顔を引きはがされる。
わたしはただ、紅さんを睨んだだけ。
紅さんを誘惑なんてしてない。
それなのに、どうしてそんな言い方になるの?
「紅さんっ!!」
ジワジワと紅さんが距離を縮めてくるから、わたしはなんとか距離を保とうと腰を引く。
そうしたら、自然とわたしの体が傾いていく……。
どうしていいのかわからず視界を泳がせた先に、目に入ったのは、ウインクをする真赭さんの背中を押して部屋から出て行く生成さんの後ろ姿だった。