美狐はベッドの上で愛をささやく

「そういう初心(ウブ)なところが紗良の可愛いところなんだけれどね……。

困ったな。紗良はわたしをどうしたいのかな……」




グイッ。

「わわっ」


紅さんはやっぱり苦笑しながら、わたしを引き寄せた。

わたしは力強い腕の中にスッポリ包まれてしまう。



紅さんから漂ってくるのは、薔薇の甘い香り。




その匂いを嗅いだだけで、わたしの頭が真っ白になって、何も考えられなくなる。




「くれないさん……あいしてる……」

体からは余分な力が抜けていく……。

もう一度告げた愛の告白は、おかしな発音になって口からすべり出た。



「そんなに無防備だと、逆に手を出しづらいんだけれど……」


「……はぅ…………」


理解できなくなった頭に響く甘い声。


クスクスと笑う甘い声と優しい息が、わたしの耳をくすぐる。





そして彼は、わたしをしっかりと腕に抱きしめたまま、続けて囁く。


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