美狐はベッドの上で愛をささやく
よかった、わたしを恐怖に突き落とす霊体はひとまずいなくなったんだ。
きっと、わたしがひとりじゃなくなったから、あの子はいなくなったんだ。
ほっと胸を撫で下ろす。
……だけど、眠っちゃダメ。
眠れば、また違う霊体がわたしを狙うだろう。
そうなれば、わたしはまた、誰かを手にかけてしまう。
今度の標的は、助けてくれたこの男の人なのかもしれないんだ……。
わたしは襲ってくる眠気から逃れようと、閉ざす目を必死にこじ開ける。
だけど、瞼(マブタ)は鉛のように重たくて、なかなか開いてくれない。
「いいよ、お休み。
大丈夫だから、安心しておやすみ」
男の人の、触れるような優しい吐息が、わたしの頬に当たる。
わたしは誘惑に勝てなくて、とうとう目を閉ざしてしまった。
見ず知らずの、綺麗な人に誘われて……。