美狐はベッドの上で愛をささやく
……やっぱり。
この人は見えていたんだ。
「あの、わたし、ここにいるとご迷惑がかかります。家に帰るので、帰り道を教えてください!!」
――この人は霊媒師じゃなくても、それに近い存在だと、そう言った。
今は大丈夫かもしれない。
でも、この人だって人間。
いつ、どこでわたしの体質が悪化してしまってもおかしくない。
男の人の霊力が少しでも無くなれば、わたしは必ずこの人を襲うだろう。
たとえ、すごい霊感があったとしても、これ以上迷惑をかけれない。
だったら、一刻も早く、ここから去るべきだ。
わたしは決意して、膝に力を入れた。
立ち上がろうと腰を上げた瞬間、男の人がわたしの両肩を掴んだ。
「帰さない」
「えっ!?」
ドキン。
今まで笑顔だった男の人の表情は、変わりないんだけど……なんだろう。
色香があるっていうか……スッと目を細めて見つめてきた。