美狐はベッドの上で愛をささやく
泣いているわたしの背中を、紅さんはずっと擦(サス)ってくれていた。
はじめて会った人に、こうやってしがみ付いて、泣いてしまったのは今までになかったことで、自分自身とても驚いているものの、紅さんはとても優しいから、そうなっても仕方がないのかもしれないと思う自分がいた。
だけど、いつまでも甘えていてはいけない。
この優しい人も、父の二の舞にさせるかもしれないんだ。
だからわたしは、まだたくさん悲しい気持ちがあったけど、紅さんから離れた。
「ふっ……ひっく…………」
頬から流れる涙をゴシゴシと擦って、何もなかった時みたいに紅さんと向き合おうとする。
「ごめっ……なさっ」
だけど声は掠れたまんまだし、嗚咽(オエツ)だってまだ口から出てしまう。
だけど、もう帰らなきゃ。
ここには長くいられない。
そう思うと、胸が締めつけられるみたいに、ギュッてなる。